[Q12-01]
修正型電気痙攣療法における塩酸ランジオロールの効果
はじめに:
重症鬱病などの治療法である修正型電気痙攣療法は、電気刺激直後に急激な徐脈、頻脈、血圧上昇などの循環変動が著しい。虚血性心疾患や脳血管障害などの合併症を持つ患者では特に注意が必要である。今回我々は、塩酸ランジオロールの電気刺激前投与にて頻脈が防止できるかを検討した。
対象:
藤田保健衛生大学病院で修正型電気痙攣療法を行ったうつ病、レヴィー小体症候群などの精神病患者9名で、塩酸ランジオロール投与群(250μg/kgをボーラス投与後40μg/kg/minにて持続投与)12例、非投与群7例ののべ電気刺激回数19例を対象とした。
方法:
プロポフォール、サクシニルコリンにて麻酔導入し、ラリンジアルマスクを挿入、呼気終末二酸化炭素濃度を35-45mmHgで調節呼吸とした。投与群は塩� �ランジオロールを投与し、非投与群は維持液のまま電気刺激を行った。
プロポフォールは脳波上痙攣終了まで持続投与とし、電気刺激後の急激な血圧上昇を予防するため、電気刺激直前の収縮期血圧が130mmHg以上の患者に対しては塩酸ニカルジピンを投与し、130mmHg未満になったことを確認してから電気刺激を行った。麻酔開始から痙攣終了までの、投与群と非投与群の心拍数を比較した。
結果:
電気刺激直前と電気刺激直後の平均心拍数は投与群においてそれぞれ93±9bpmと95±13bpm、非投与群では92±17bpmと130±21bpmであり、電気刺激前後における心拍数の変化は、投与群でほとんど見られなかったが、非投与群では有意に上昇した(p<0.005)。
まとめ:
電気痙攣療法における頻脈は塩酸ランジオロール投与にて良好に管理し得る� ��
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病院で患者の不安
[Q12-02]
ヒトにおいてランジオロールはセボフルランのMACを低下させるか?
Does landiolol decrease minimum alveolar concentration (MAC) of sevoflurane in human?
【背景】
ヒトにおいてエスモロールは単独ではイソフルランのminimum alveolar concentration (MAC)を低下させない(が,alfentanil併用下ではMACを減少させる))と報告されている(1).しかし,ランジオロールに関しては未だMACにいかなる影響を与えるかは報告がない.今回我々は,ランジオロールがセボフルランのMACに影響を及ぼすか否かを検討した.
【対象と方法】
42人の下腹部手術を受ける女性を対象とした.執刀20分以上前に,高濃度セボフルランにて麻酔導入.ランジオロール群は導入時にランジオロールを最初の1分間は,0.125mg/kg/minで投与,その後,0.04mg/kg/minで持続投与した.対照群は生食を投与した.MACの測定はup-down methodを用いて行った(2).
【結果】
対照群は42±8歳,体重56±7kg,身長158±5cm,ランジオロール群は43±9歳,体重57±7kg,身長160±5cm (以上平均±標準偏差)であった(いずれもn=21).対照群のMACは2.2±0.2%,ランジオロール群のそれは1.7±0.2%であった(P【考察と結語】
ヒトにおいてランジオロールがセボフルレンのMACを減少させる機序は本研究では明かではない.β遮断薬は麻酔薬の鎮静作用を増強する作用があるのは確かなようであるが(3)ランジオロールでは未だ明らかではない.ラットにおいてβ1遮断薬には侵害刺激抑制効果がある可能性がある(4)がヒトでは明らかではない.イヌではランジオロールはセボフルレンのMACに影響を与えない(5).しかし,ヒトにおいてランジオロールはセボフルランのMACを低下させる.
【文献】
1. Johansen JW, et al. Anesth Analg. 1998;87:671-6
2. Wajima Z, et al. Anesth Analg. 2002;95:393-6
3. Yang H, Fayad A. Can J Anesth 2003;50:627-30
4. Kinjo S, et al. Anesth Analg 2005;100:S-265
5. Ota S, et al. Anesth Analg 2005;100;S-343
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労作性頭痛
[Q12-03]
ランジオロールの投与によりvital capacity rapid inhalation inductionによる意識消失時間を短縮させる
Landiolol infusion shortens the time to loss of consciousness by vital capacity rapid inhalation induction
【背景】
β遮断薬は麻酔薬の必要量を減らし得る効果を有する,と報告されている(1).しかし,ランジオロールにも他のβ遮断薬と同様,そのような効果があるのか否かは充分検討されていない.今回,ランジオロール投与下においてvital capacity rapid inhalation induction (VCRII)にて麻酔導入を行った場合,意識消失時間に影響を与えるか否かを検討した.
【対象と方法】
42人の女性の患者を対象とした.麻酔導入法はすでに報告したとおりである(2,3).患者に麻酔回路を接続後直ちに,ランジオロール群は最初の1分間は0.125mg/kg/minで投与,その後0.04mg/kg/minで持続投与した.対照群は生理食塩水を投与した.睫毛反射と呼名反応がなくなった時間を意識消失時間とした.
【結果】
意識消失時間は,対照群77±27秒,ランジオロール群62±13秒(平均±標準偏差)(P【考察と結語】
本研究では心拍出量を測定していないことが問題点としてあげられようが,プロポフォール投与下(目標血中濃度4μg/ml)にて,常用量のランジオロール投与5分後で心拍数,平均血圧の変化なし,との報告がある(4).また,プロポフォール,サクシニルコ リンにて麻酔導入,同時にランジオロール0.1mg/kgを投与後,2%セボフルラン,酸素にて90秒換気した場合,心拍数,平均血圧には変化がない,との報告もある(5).従って,本研究での両群の心拍出量の差はほとんどないと考えた.したがって,ランジオロールには麻酔効果を増強する作用がある可能性が示唆される.
【文献】
1. Yang H, Fayad A. Can J Anesth 2003;50:627-30
2. Wajima Z, et al. J Anesth. 1995;9:6-10
3. Wajima Z, et al. Anesth Analg. 2002;95:393-6
4. 河野崇ら.麻酔2005;54;610-4
5. Yamazaki A, et al. Can J Anesth. 2005;52:254-7
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減量運動悪い膝
[Q12-04]
ランジオロールのスキサメトニウム筋弛緩増強作用についての検討
Potentiating effect of landiolol on suxamethonium-induced neuromuscular block
目的】プロプラノロールやエスモロールなどのβ遮断薬は、スキサメトニウム(Sux)の脱分極性筋弛緩を増強する。しかしランジオロール(L)とSuxの相互作用については報告がない。この点について今回検討したので報告したい。方法】婦人科下腹部手術にて全身麻酔が予定された成人女性30人(L群、対照(C)群各15人ずつ)を対象とした。L群ではLを最初0.125mg/kg/分で1分間静脈内投与後、引き続き0.04mg/kg/分で投与し、C群は生理食塩水を投与した。投与5分後、両群ともプロポフォール、フェンタニルにより麻酔導入し、筋弛緩薬を投与せずにラリンゲルマスクを挿入、亜酸化窒素67%、酸素により人工呼吸した。プロポフォール持続投与、フェンタニルの適宜投与にて麻酔維持下に、2Hz-train-of-four(TOF)尺骨神経刺激による母指内� �筋収縮反応を加速度マイオグラムにて導出、記録した。反応が安定し、かつL投与から20分経過した時点で、Sux(1mg/kg)を単回静脈内投与し筋弛緩の推移を観察、記録した。なおLの投与は筋弛緩からの完全回復が得られるまで継続した。結果】作用発現や筋攣縮の程度に群間差はなかった。T1がコントロール値に回復するまでの平均時間はL群で有意に延長した(L群:12.2分、C群:9.8分)。しかしLはTOF比の回復には影響しなかった。Sux投与後に徐拍化を呈した症例は認められなかった。まとめ】LはSuxの作用を有意に延長する。ただしその延長は3分ほどであり、臨床上問題となるほどの影響ではなかった。またLはSuxにより誘発される徐拍化作用を増強することもなく、安全に併用できると考えられた。
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[Q12-05]
ランジオロールが術中喘息患者の呼吸機能へ及ぼす影響
Effects of landiolol on airway functions for patients with mild asthma during operations
術中は侵害刺激により高血圧や頻脈が起こりやすい。なかでも頻脈は虚血性心疾患の発生率と相関し、βブロッカーによる治療が有効であることが知られてい る。従来使用されてきたプロプラノロールは作用時間が長く、β1選択性がないため、気管支攣縮を引き起こす可能性があり、その使用に制限があった。今回、喘息患者の術中の頻脈に対して超短時間作用性でβ1選択性の極めて高いランジオロールを使用し呼吸機能への影響を検討したので報告する。
【対象】軽症の喘息に罹患中の手術予定患者46名
【方法】術中、対象患者の心拍数が100回/分以上3分持続した時点でランジオロール0.125mg/kgを1分間投与後、0.04mg/kg/minで原則 10分間持続静注し、必要に応じて中止できることとした。薬剤の投与前、投与中、投与後の心拍数、心電図変化、SpO2、血圧、Cdyna、Rawなどを測 定した。
【結果】46名中27名に頻脈が起こり、ランジオロールの投与により、心拍数は107.3±9.3から84.5±2.1と有意に低下した。Cdyna、Rawに有意な変動は認めら れなかった。心電図でのST変化も認められなかったが、1症例にSpO2の低下が認められた。
【結論】喘息患者の術中頻脈の治療にランジオロールを使用し、有意に心拍数が低下したが、呼吸機能に対する影響は認められなかった。
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[Q12-06]
高血圧患者気管挿管時におけるランジオロールの有効性の検討
Efficacy of landiolol, a novel short acting beta-blocker in atenuating cardiovascular responses during intubation in general anesthesia.
【目的】気管挿管時の血行動態変化に与えるランジオロール(LA)の有効性をフェンタニル(FE)と比較検討したところ、平均血圧はLA群では上昇、一方FE群では低下し、心拍数はLA群で低下する傾向を認めた1)。そこでより血行動態の安定が必要な高血圧患者においても同様の傾向が見られるかを検討した。【方法】予定手術患者60名(うち高血圧群30名)を対象とし、ランジオロール投与群(LA群)、フェンタニル投与群(FE群)、生理食塩水投与群(NS群)の3群に無作為に振り分けた。対象患者をプロポフォール2mg/kg、ベクロニウム0.1mg/kgで麻酔導入後、酸素‐セボフルラン1%で測定終了まで維持した。各々入室時、薬剤投与2分後、挿管直後、挿管5分後に心拍数と平均血圧を測定し血行動態を評価した。結果は平均±標準偏� ��で表した。統計処理はrepeated measured ANOVAを用い、p
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[Q12-07]
塩酸ランジオロールの前投与は,気管挿管時の心拍数の上昇を抑制するが,筋弛緩薬の作用発現を遅らせる
Landiolol attenuates the hemodynamic response to tracheal intubation, but delays the onset time of vecuronium
近年,気管挿管時の心拍数の上昇を塩酸ランジオロールが抑制するとの報告がある。しかし,β受容体遮断である塩酸ランジオロールは心拍出量を抑制し,筋弛緩薬の作用発現を遅らせる可能性がある。本研究では,塩酸ランジオロールの投与が及ぼす気管挿管時の循環動態の変動と,筋弛緩薬の作用発現時間について調べた。【対象と方法】全身麻酔が予定されたASAリスクIの年齢20〜50歳までの患者40例を対照として,気管挿管前に,塩酸ランジオロールを投与した群(L群;20例)と同量の生理食塩水を投与した群(P群;20例)の3群に分けて比較検討した。麻酔の導入はプロポフォール2mg/kgにより行い,塩酸ランジオロールもしくは生理食塩水の投与か開始から5分後にベクロニウム0.1mg/kgを投与し,train of four(TOF)が0(TOF0)に達した時点で気管挿管した。塩酸ランジオロールの投与は,0.125mg/kg/minで1分間,その後0.04mg/kg/minで4分間持続投与した。そして,気管挿管前後の循環動態の変動およびベクロニウム投与からTOF0達するまでの時間を測定した。【結果】両群間の患者背景に有意な差はなかった。気管挿管前後の平均動脈圧の変動は両群間に有意な差は認められなかったが,心拍数の変動はL群が有意に少なかった。TOF0に達するまでの時間はL群がP群と比較して有意に延長していた。【考察】麻酔導入前に使用された塩酸ランジオロールは筋弛緩薬の作用発現を延長する可能性が示唆され,気管挿管のタイミングに注意が必要と考えられた。
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[Q12-08]
高血圧患者の挿管時循環変動に及ぼすランジオロールとエスモロールの比較検討
Conparative Effects of Landiolol and Esmolol on Endotracheal Intubation in Hypertensive Patiensts
以前我々は、高血圧患者に対しランジオロール0.2 mg/kgの気管挿管4分前投与が、気管挿管後の頻脈を有意に抑制すると報告した。今回、ランジオロール同様、超短時間作用性β1ブロッカーとして広く使用されているエスモロールを高血圧患者の気管挿管時に使用し、その効果をランジオロールと比較した。
【方法】無作為に抽出した高血圧患者20名をランジオロール群(L群:10名)、エスモロール群(E群:10名)の2群に分けた。麻酔はプロポフォール(TCI:5μg/ml)で導入し,ベクロニウム0.1 mg/kgで筋弛緩を得た後、気管挿管した。挿管4分前に、L群ではランジオロール(オノアクト®)0.2 mg/kg、E群ではエスモロール(ブレビブロック®)1.0 mg/kgを静注した。非観血的血圧、心拍数、BIS値を麻酔開始前から気管挿管5分後まで適宜測定した。
【結果】2群間の患者背景に有意差はなかった。入室時と比較すると、両群とも麻酔導入後から挿管直前まで収縮期血圧が有意に低下したが、挿管1分後には入室時の値に復帰した。E群ではL群より、挿管直前まで血圧が有意に低かった。気管挿管前の心拍数は、L群では入室時と差がなかったのに対し、E群では入室時よりも有意に減少した。挿管後の最大心拍数は、両群とも入室時と比較して差は無かった。L群では挿管後から有意に心拍数が低下したが、E群では有意な変化は無かった。BIS値、脳内予測血中濃度は、どの計測地点においても両群間に差はなかった
【結語】高血圧患者において、気管挿管4分前にランジオロール(0.2mg/kg)ま たはエスモロール(1mg/kg)を単回投与すると、挿管後の頻脈を抑制できる。
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