六号通り診療所の石原です。
今日は水曜日なので、診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で品川の方まで遠征します。
診断書や紹介状を書いて、
それから今PCに向かっています。
埼玉県で、15歳の少女が父親を殺害した事件がありましたね。
警察からリークされた情報で、
少女が犯行の前に、
「父親が家族を皆殺しにする」、
夢を見たというものがありました。
テレビに犯罪心理学の偉い先生が登場して分析を求められ、
「少女の父に対する鬱屈した感情が、
この不吉な夢によって後押しされた可能性がある」
と言う意味合いのコメントをしていました。
違うでしょう。
僕でも分かります。
夢は自分が見るものなんですから、
そんな後押しをする訳がありません。
この夢にもし問題のポイントがあるとしたら、
それは夢に出て来た「父親」が、
本当に「父親」かどうか、
ということです。
夢に特定の人物が出て来た時は、
まずその人物が本人なのか、
その人物が象徴するコンプレックスの代用なのか、
それとも全く別の人物なり感情が、
その人物の振りをしているだけなのか、
そのことを常に考えなければいけません。
この場合、少女は現実に父親を殺しているのですから、
むしろ夢の父親は、元は別の人物だった可能性の方が高いのです。
テレビに出て来たあの先生は、
夢のことはあまりお詳しくないのだと思います。
それなら、「分かりません」と言えばいいのに、
そうは出来ないんですね。
膣の痛み妊娠の兆候
すいません。
ちょっと余談でしたね。
勿論、事件そのものを云々するつもりはありません。
現代の切実な問題が潜んでいるのは分かりますが、
軽率な論評は関係者の方に失礼ですし、
僕の手には余ります。
ただ、あまりに夢判断が酷かったので。
それだけです。
前置きが長くなりました。
今日の話題です。
ビタミンの話を続けます。
昨日はビタミンB12と貧血との関係を、
取り上げました。
今日は診療所で経験した、ビタミンB12欠乏による、
貧血の一例をご紹介します。
患者さんは、90代の女性です。
以前からヘモグロビンが10程度の貧血はありましたが、
ご年齢も考えれば病的なものではない、
との判断で経過をみていました。
それが、食欲不振と全身のだるさを訴えて診察にみえたのです。
診察上も強い貧血が疑われたので、
採血をしました。
その結果は以下の通りです。
ヘモグロビン6.6g/dl 、MCV122fl。
細かいデータは省きますが、高度の貧血です。
しかも、MCVが上昇していて、大球性貧血のパターンでした。
(MCVについては、昨日のブログをご覧下さい)
それで、ビタミンB12の血液の濃度を測ってみました。
結果は119pg/ml 。
正常値は大雑把に言って、200~1000ですから、
ビタミンB12の数値が低下しているのが分かります。
不安発作の症状が発生する
本来はここで、
ビタミンB12が不足している原因を調べなければいけません。
胃が悪いのか、それとも血液の病気があるのか。
そのためには、胃カメラや骨髄の検査が必要になります。
しかし、この方は90代というご高齢のため、
身体に負担になる検査は避け、
ビタミンB12を取り敢えず補充して、
経過を見る方針にしました。
以下、その経過を示します。
まず1000μgのビタミンB12を、1回注射しました。
通常ビタミンB12の注射液には、
1本500μgのビタミンが含まれています。
ですから、2本分を1回に打ったことになります。
それで、3週間後の採血がこれです。
ヘモグロビン10.1g/dl 、MCV112fl 。
どうでしょう。MCVはまだ高値ですが、
貧血は著明に改善しています。
一ヶ月後に今度は500μgを注射して、
そのまま様子をみて、
その1ヶ月後の採血がこれです。
ヘモグロビン10.2g/dl 、MCV101fl 、
そして、ビタミンB12の濃度が、486pg/ml でした。
全て正常値に戻っていることが、
お分かり頂けるかと思います。
この方は、ビタミンB12を身体にうまく取り込めないご病気がありました。
そのために、身体のビタミンB12は殆ど枯渇し、
重度の貧血を来たしていた訳です。
それでも、たった2回の注射で、
症状は改善し、血液のビタミンの濃度も、
正常に戻りました。
"関節炎から膝の痛み"
実は、教科書に書いてある「巨赤芽球貧血」の治療法では、
もっと大量の注射をするように、
と書いてあるのです。
ある治療の本には、同じ注射を20日間連続で行なえ、
と書いてありました。
週3日の注射を2ヶ月行なえ、と書いてある本もあります。
そのくらいは使わないと、貧血は改善しない、
と書いてあるのです。
これは非常に奇妙なことなのですが、
アメリカの教科書には、
週に1回1000μgを8回やれ、と書いてあります。
通常アメリカの治療に使われる薬の量の方が、
多いことが殆どなのですが
この場合に限って、
日本の投与量の方が多いんですね。
不思議なことです。
もし、上の例の方にそんなに注射を繰り返したらどうなるでしょう。
仮に副作用がないとしても、
どう考えても過剰投与ですよね。
3本の注射で十分なのに、20本も注射しろ、
と書いてあるのですから。
そこには、体内の備蓄を正常に戻すため、
という一応の理屈があるのですが、
それに対する疑問と反論とは、また後で述べます。
ビタミンB12の投与については、もっと不思議なことがあります。
このビタミンB12の注射薬は、
日本では末梢神経障害の適応が保険で認められているんです。
手足がしびれた、といった症状に対して、
それがビタミンB12の不足によるものかどうかは調べなくても、
やみくもに注射して、それでいいことになっているんです。
こんなことをしているのは、おそらくは日本だけです。
しかも、その注射の量が、
週に3本を続けること、
と書いてあるのです。
ビタミンが完全に枯渇した人でも、
3本で改善する注射を、
毎週3本ずつ打ち続けろ、
と言うのです。
これが過剰投与でなくて、一体何だと言うのでしょうか。
セラチア菌の院内感染で問題になった病院がありましたね。
このブログでも何度か取り上げました。
あの整形外科の医院では、
このビタミンB12を点滴に入れて、
繰り返し点滴をしていたのです。
そんな行為が治療として成立することが、
僕にははなはだ疑問です。
でも、そのこと自体は違反でも何でもないんです。
ビタミンB12が不足している、という根拠が何もなくても、
ちょっと手足がしびれる症状があるだけで、
じゃんじゃん点滴しても、注射しても、
いいことになっているんですから。
ニンニク注射と言われるものの中に、
混ざっていることもあります。
(ニンニク注射と言われるものの、内実は本当に様々です)
めまいや耳鳴りに効く、と称して、
注射を繰り返している医院もあります。
それはもう、検査もせず、投与量の検証もせずに、
じゃんじゃん使っている訳です。
ビタミン剤なんだから、健康に問題はない筈だ、
と思いますか?
明日はその点について、もう少し検証してみます。
それでは今日はこのくらいで。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。
石原がお送りしました。
0 件のコメント:
コメントを投稿